月闇家の物語8 - 終幕

　実はまだ二階にいるのです。

　その事件の2日後に「月闇が家を出るための家族会議」を開きました。明らかに母はウキウキしているのが手に取るようにわかります。「多少のお金を与えて、さっさとロフトが出ていってもらう」という思考が筒抜けです。

　なので「手切れ金1000万円払ったら1週間で出る！」と先に無茶苦茶な条件を叩きつけたところ破談。もう少し現実的な条件も提示したのですけど、そちらも全面拒否。

　どうも、父母両者とも損得計算が全く出来ないようで、父母も損しない条件を提示したのですけどそれを理解しなかったようです。全拒否すると「自分」の家なのに2階とロフトに入れなくなるけど、また、養分としての妹を取り込むチャンスが完全になくなるのですけど、それで構わないのでしょうか。全く不思議です。

　これまで、母は家を守るのが生きがいで、ほとんど外出しませんでした。吸血鬼に成ってしまったから、外の光や気が苦手のようです。しかし、妹が養分の座から離脱すると一変、父母は孫を連れて、映画に行き、プールに行き、外食に行きと、3日とおかずに外出するようになりました。返ってくるとエネルギーを吸われた子供が、夜中にぐずりだしたり、精気を抜かれてうつろにスマホを見る始末。

　この日も、直前に急遽食事会で孫が連れ出され、父母はエネルギー万全で臨んだつもりのようです。(家族会議20分前に私と妹で「取り返し」をしましたが。)

　夕刻、子どもたちのエネルギーを吸った母は、珍しいサイキックアタックをしてきました。私の「常識」を奪おうとしてきたのです。常識がメンタル体のエネルギーで、人から奪えることに驚きです。ただ、既に常識が壊れているとは、思わなかったでしょうね。

　取り返ししたうえで、交渉中は「キチガイ」を装いました。まともに交渉すると、私の命が危ないからです。交渉決裂の後に、2階の妹が家族会議に参加。今回の発端は妹の自立と片付けですからね。妹は穏健＆常識的に、月闇は関わると面倒だと思わせるために道化のように無限大の舞い、キチガイ全開モードで常時「世界平和の祈り」をブツブツと唱えます。時々、親の意見を茶化し、苛立たせ、ツッコミを入れます。

　あれです、グッドコップとマッドコップってやつです(嘘)。

　キチガイに絡まれるのがたまらなかったのでしょう。「宗教みたいで気持ち悪い、私を巻き込まないで。」とどこかで聞いたようなセリフを母は言いました。何故、みんな同じセリフを言うのだろう、本当に不思議だなー(棒)。

　3時間の話し合いの末、2階とロフトの支配権の完全確保です。生協の箱も1階で管理。引っ越しが立ち消えしました。穏健な話し合いのせいで父は妹に完全に同情しており、キチガイ月闇には関わるまいと決めたようです。後にキネシで点数を調べると、野球で例えるなら「9対2」で月闇妹連合の勝ち、だそうです。

　めでたしめでたし？

 

　と、いくわけありません。その日の夜、ものすごいサイキックアタックが来ました。今までは「殺したい」と漠然とした思いだったのに、「月闇の脳と心臓の血管切れろ！」とピンポイントに攻撃が来ました。

　仕方ないので「取り返す」で、その攻撃の念を母に送り返しました。仕方ないね、このままだと、私の心臓止まっちゃうからね。

　時間は2:20頃、怖ろしいことに気付きます。この時点から母のエネルギー量が「0」になっているのです。1階はエネルギー環境が悪く、本人も吸血鬼でエネルギー不足。なので、ここ最近は10点満点で他人のを吸うと4点くらいに、減ると2点あたりをウロウロしていました。それが、攻撃を完全に跳ね返したところ「0点」に。完全にエネルギーがないと腕で反応が出ます。

「すわ、死んだか！？」

　と思いきや、翌日普通に動いています。そして、今日もまだ生きています。0点のまま。うーん、これはどう解釈したらいいのでしょうか。想念の世界では「母は亡くなっている」ですかね。灼眼のシャナのトーチみたいなものでしょうか。

　この一件があってから母の周囲の吸血鬼(父、上の妹の旦那や下の妹の元旦那)のエネルギー量も0になり、こちらも変化がありません。エネルギーの上納ピラミッドが壊れたようなのです。

　推測ですが、日常生活を安穏と繰り返すだけならエネルギーが0でも問題がないようです。まぁ、家が流されたり、東京が穴ぼこだらけになったり、富士山が爆発したり、お金の価値がなくなったりした時に、生き残れるかどうかは知りませんが。

　ただ、いつまでものんきにゾンビ観察しているわけにもいかないようです。この家での最終的な勝利は、

・母は全員を巻き込んでディセンションすること。

・月闇はこの家から離れること。妹や子どもたちも連れていけばなお良し。

なので、引っ越し＆縁切りは急務ですね。半年後くらいにはなんとか。

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